教育資金贈与による相続税対策!
税金対策には、さまざまな方法があります。しかし多額の相続税がかかる可能性があるほど財産を持っている人は、対策に苦労されるケースも多いようです。
相続税の対策としては、生前贈与によって毎年110万円ずつ贈与していく暦年贈与が有名ですが、短期間で相続財産を圧縮できない点がデメリットといえます。
そこで今回は、短期間で多くの財産を非課税で贈与する方法として、教育資金の一括贈与にかかる贈与税非課税制度による相続税対策についてお話していきます。
【目次】
教育資金の一括贈与にかかる贈与税非課税制度とは
教育資金の一括贈与時の非課税制度とは、自分の資産の一部を30歳未満の子供や孫などに教育資金を贈与した場合、最高1,500万円までが贈与税の対象とならない制度です。
通常、自分と血縁関係があっても資産を譲渡した場合は贈与税の対象となり、贈与した金額が年間で110万円を超えた場合は、贈与税を支払わなければなりません。仮に年間で1,500万円のお金を贈与すると、約360〜450万円の贈与税を支払う必要があります。
そこで教育資金の一括贈与非課税制度を利用することで、贈与税を支払うことなく資金を贈与できます。
教育資金一括贈与非課税制度の利用方法
教育資金の一括贈与非課税制度を利用するには、銀行や証券会社などの金融機関で専用の口座を開設し、教育資金の贈与にかかる契約を締結しなければなりません。
保有できる口座は、資金提供を受ける人(受贈者)1人につき、1金融機関1口座のみです。また、金融機関を通じて納税地を管轄する税務署に教育資金非課税申告書を提出しなければなりません。
教育資金口座を作ったあとは、その口座からお金を使ったときに、何にいくら使ったのかが分かる書類(領収書など)を金融機関に提出する必要があります。
非課税枠が適用されるのは、平成25年4月1日から令和5年3月31日までに贈与された教育資金です。ただし、一度贈与されたお金は、贈与してくれた人に戻せない点に注意しましょう。
非課税となる教育資金の定義とは
非課税の対象となる教育資金には定義があります。具体的には、以下の2種類に分けられます。
⑴学校等に直接支払われる金銭
⑵学校等以外の者に対して直接支払われる金
それぞれの詳細については、以下の通りです。
⑴学校等に直接支払われる金銭
①入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料など
② 学用品の購入費、修学旅行費や学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など
※学校等とは学校教育法で定められた幼稚園、小・中学校、高等学校、大学(院)、
専修学校及び各種学校、一定の外国の教育施設、認定こども園又は保育所など
⑵学校等以外の者に対して直接支払われる金銭
<イ 役務提供又は指導を行う者(学習塾や水泳教室など)に直接支払われるもの>
③教育(学習塾、そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
④スポーツ(水泳、野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)その他教養の向上のための活動に係る指導への対価など
⑤、③の役務の提供又は④の指導で使用する物品の購入に要する金銭
<ロ イ以外(物品の販売店など)に支払われるもの>
⑥、②に充てるための金銭であって、学校等が必要と認めたもの
⑦、通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費
※令和元年7月1日以後に支払われる上記③~⑤の金銭で、受贈者が23 歳に達した日の翌
日以後に支払われるものについては、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講する
ための費用に限ります。
※出典:国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」
そのため、上記に該当しない旅行や遊園地の入場料、カラオケなどの娯楽費用は、保護者が教育の一環だと考えていても教育資金とはみなされません。
また、⑵の金額には500万円の上限が設けられているため、塾や習い事などの費用が上限を超えないように注意しましょう。
教育資金一括贈与非課税制度で贈与税が発生するケース
非課税制度を利用して資金提供を受けても、教育資金の贈与にかかる契約が終了すると、終了時点で口座に残っているお金に対して贈与税がかかる可能性があります。
教育資金の贈与にかかる契約は、以下のような事由で終了します。
受贈者が30歳に達した(学校等に在学または教育訓練校に在学しているかつ金融機関に届けている場合は除く)
受贈者(30歳以上の者に限ります。3において同じ。)がその年中のいずれかの日において学校等に在学した日又は教育訓練を受けた日があることを、取扱金融機関の営業所等に届け出なかったこと
受贈者が40歳に達した日
受贈者が死亡した
口座の残高がゼロになり、かつその口座に係る契約を終了させる合意があったこと
※出典:国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」
教育資金の贈与にかかる契約が有効であるときに、教育資金以外でお金を使った場合は、契約が終了する年に贈与税を支払う必要があります。購入したときではないため注意しましょう。
教育資金一括贈与非課税制度で相続税が発生するケース
令和3年度税制改正により、適用期限が令和5年3月31日まで2年延長されるとともに、贈与者が死亡した場合の残高に対する相続税課税について、以下のとおりとされました。
教育資金一括贈与非課税制度を利用し、契約が終了の日までの間に贈与者が死亡した場合において、受贈者がその贈与者から、この非課税制度の適用を受けたことがあるときは、その死亡の日までの年数にかかわらず、その死亡の日における管理残額を相続等により取得したものとみなすこととされました。
受贈者が以下のいずれかに該当する場合は除きます。
- 23歳未満である場合
- 学校等に在学している場合
- 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合
※上記2又は3については、その旨を明らかにする書類を贈与者が死亡した旨の届出と併せて金融機関等の営業所等に提出等をした場合に限ります。
上記により相続等により取得したものとみなされる管理残額について、その受贈者が孫などの場合は、相続税額の2割加算の対象とされました。
令和3年4月1日以後に信託等により取得する信託受益権等に係る相続税及び贈与税について適用されます。
拠出時期 | ~平成31/3/31 | 平成31/4/1~令和3/3/31 | 令和3/4/1~ |
相続税課税 | 課税なし | 死亡前3年以内の拠出分に限り、課税あり | 課税あり |
相続税額の2割加算 | 適用なし | 適用なし | 適用あり |
※出典:国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」
教育資金一括贈与非課税制度はどんな人におすすめ?
教育資金の一括贈与非課税制度は、そのまま遺産を相続した場合に多額の相続税が発生する人のうち、短期間で多額の資金を贈与したい人におすすめです。
もともと教育資金の贈与は非課税ですが、教育資金が必要になったタイミングで、その都度贈与しなければなりません。
例えば、子供が大学に進学するタイミングで、進学資金を贈与するのは非課税ですが、将来の大学進学に備えるため資金提供すると贈与税の対象になります。
まとめ
教育資金の一括贈与非課税制度は、贈与税を負担することなく短期間で多くの資金を提供できます。そのため、相続税の支払いを抑えるために急いで資金を圧縮しなければならない人におすすめです。
一方で口座の管理に少々手間がかかるだけでなく、また、贈与税や相続税の対象となる点に注意して利用しましょう。
弊社では、お客様1人ひとりに合わせて、非課税制度や生命保険を活用した税金対策をご提案させていただいておりますので、お気軽にご相談ください。
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