小規模企業共済のメリットとデメリットとは?
「小規模企業共済」という名前を聞いたことがあっても、具体的にどのような制度であるかご存じない方も多いのではないでしょうか。
小規模企業共済は、簡単にいえば退職金の代わりとなる資金を準備できる制度です。退職金がない個人事業主やフリーランスなどにとっては心強い制度ですが、メリットもあればデメリットもあるため、よく理解したうえで加入することが大切です。
本記事では、小規模企業共済のメリットとデメリットをわかりやすく解説します。
【目次】
小規模企業共済とは
小規模企業共済は、小規模企業共済法にもとづいて昭和40年に発足した制度です。一定の加入要件を満たした人が小規模企業共済に加入して掛金を支払うと、事業を終了するときや経営を引退するときなどにまとまった金額の共済金を受け取れます。
掛金は、1,000〜70,000円までの範囲内で、500円単位で自由に設定が可能です。また加入期間中は、規定の範囲内で自由に掛金を増額したり減額したりできます。
小規模企業共済の加入者が受け取れるお金は、以下の4書類です。
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共済金A:事業を廃業した場合や契約者が亡くなった場合など
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共済金B:老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ方)
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準共済金:個人事業が法人成りをして加入資格がなくなり解約をしたとき
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解約手当金:任意解約・機構解約
※出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「共済金(解約手当金)について」
※上記は個人事業主の請求事由です。法人の役員や共同経営者は請求事由が異なります。
小規模企業共済のメリット
小規模企業共済の主なメリットは、以下の3点です。
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掛金の全額が所得控除の対象
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退職金代わりの資金を準備できる
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貸付制度を利用できる
掛金全額が所得控除の対象
小規模企業共済に加入して支払った掛金は、全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税の課税の対象となりません。例えば、毎月の掛金が5万円であれば、最高60万円が所得から控除されます。
所得税や住民税は、1年間の課税対象所得に所定の税率をかけて税額を計算します。小規模企業共済の掛金を支払うことで、課税対象所得が少なくなるため、所得税や住民税の節税効果が期待できます。
退職金代わりの資金を準備できる
小規模企業共済に加入して6か月以上掛金を積み立てると、廃業したときに共済金を受け取れます。また、掛金を12か月以上積み立てて解約すると、解約手当金を受け取ることも可能です。受け取った共済金や解約手当金は、退職金代わりとして活用できます。
共済金の受け取り方は、一括受取と分割受取、あるいはその両方を選択できます。そのためまとまった退職金だけでなく、退職年金に相当するお金を受け取ることも可能です。
自営業者は会社員とは異なり退職金をもらえません。老後生活に備えてまとまった金銭を準備しておきたい方は、小規模企業共済に加入するのも選択肢の一つです。
貸付制度を利用できる
小規模企業共済に加入している人は、支払った掛金の一定割合までの貸付を受けられます。小規模企業共済の貸付制度は低金利であり、即日貸付も可能です。
例えば、事業の資金繰りに困ったときは、小規模企業共済の貸付制度を利用して一時的にお金を借りることで、危機を乗り切れる可能性があります。
小規模企業共済の貸付制度には「一般貸付制度」「緊急経営安定貸付け」などの種類があり、借入限度額や借入期間、借入金の返済方法、利率などが異なります。
小規模企業共済のデメリット
一方で小規模企業共済には、以下のデメリットがあります。
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元本割れする可能性がある
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受取時に課税される
元本割れする可能性がある
小規模企業共済は、事業を廃業する前に解約をすると解約手当金を受け取れます。しかし、掛金の納付月数が240か月未満(20年)未満である場合、解約手当金の金額は掛金の合計支払額を下回って元本割れとなります。
たとえ所得控除による節税効果を得られたとしても、短期間で解約して元本割れとなることで結果的に損をすることがある点には注意が必要でしょう。
※廃業して退職金として受け取る時などはこの20年未満の縛りはありません。
受取時に課税される
共済金を一括で受け取ると退職所得扱いに、分割で受け取ると雑所得扱いとなり、所得税の課税対象となります。そのため、共済金のすべてが手元に入ってくるわけではありません。
ただし共済金を一括で受け取った場合、受取額から退職所得控除が差し引かれた金額の1/2しか課税の対象になりません。分割で受け取った場合は、公的年金等控除が受けられます。
よって共済金は、退職金や国から支給される年金(老齢年金)と同様の税制メリットがあり、税金がかかりにくくなっています。
小規模企業共済の対象者・加入方法
小規模企業共済に加入できるのは、以下のいずれかに該当する場合です。
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建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
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商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
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事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
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常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
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常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
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上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)
※出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「加入資格」
2つ以上の事業を行っている場合は、 主たる事業の業種で加入します。
配偶者をはじめとした事業専従者や、協同組合は医療法人になど直接営利を目的をしたい法人役員などは小規模企業共済に加入できません。
まとめ
小規模企業共済に加入することで、退職金代わりの資金を準備できます。また、所得控除による節税効果が期待できるだけでなく、貸付制度を利用して資金繰りの改善も可能です。
個人事業主は、小規模企業共済に加入することでさまざまなメリットを得られます。個人事業主や法人の役員などは、加入を検討してみてはいかがでしょうか。
また、退職金の受け取り方で税金が大きく変わってきます。
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