「高額療養費制度」2025年8月改正-家計への影響と今からできる対策
高額療養費制度は、医療費負担を軽減するための重要な制度です。手術や入院など高額な医療費が発生しても、所得に応じて一定の自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度のため、家計に大きな負担をかけずに必要な医療を受けることができるセーフティーネットの役割を果たしています。
本記事では、2025年8月から段階的に実施される改正のポイント、その影響、そして具体的な対策を解説します。
【目次】
高額療養費制度の改正の背景と目的
今回の改正は、医療費負担の公平性を高めると同時に、社会保障制度の持続可能性を確保することを目的としています。高齢化や高額薬剤の普及等により、医療費や社会保障費は年々増加しており、その財源を確保する必要性が高まっています。
特に、現役世代の保険料負担を軽減するため、高所得者など負担能力に応じた制度設計が求められています。そのため、年収区分を細分化し、自己負担限度額を段階的に引き上げることが決定されました。
出典:厚生労働省
『2025年以降、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、超高齢化社会に突入していきます。(団塊の世代Jrがこの後に続く) 医療費が今後爆発的に増える為、その財源確保の為の制度改正の1つと言えるでしょう。』
2025年8月の高額療養費制度改正内容
厚生労働省は、2025年8月から2027年8月にかけて、3段階で自己負担限度額を引き上げる方針を固めました。
1.2025年8月:現行の区分を維持しつつ、2.7~15%の引き上げ。
2.2026年8月・2027年8月:年収区分を細分化し、さらなる引き上げを実施。
以下に、2025年8月改正時と現行制度の比較、さらに2027年8月改正後の自己負担限度額を示しています。
2025年8月改正後
2027年8月改正後
改正が家計に与える影響
今回の改正によって、多くの家庭に以下のような影響が予想されます。
- 中間所得層の負担増加
所得区分が細分化されることで、一部の中間層家庭では医療費の負担が増えます。例えば、現行制度では年収600万円の家庭の自己負担限度額は8万100円ですが、最終的な改正後にはこれが11万3400円になります。 - 高所得層への影響
自己負担限度額の引き上げにより、医療費が高額になる場合の負担が大きくなります。例えば、現行制度では、年収1700万円の自己負担限度額は25万2600円ですが、最終的な改正後には、44万4300円になり、相当な負担増が見込まれます。 - 低所得層への配慮
低所得層については、自己負担限度額の上昇を最小限に抑える措置が講じられています。住民税非課税世帯では、改正後も限度額の増加はわずかで、配慮がなされています。
また、さらに負担を軽減する仕組みとして「世帯合算」、「多数回該当」があります。
- 世帯合算
同一世帯で、同じ医療保険に加入している家族の自己負担額を1か月単位で合算することができます。 - 多数回該当
過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がります。 同一世帯での合算による高額療養費にも適用されます。
改正後もこれらの仕組み自体は維持される見通しですが、適用される限度額が改正によって変更になる可能性があるため、あらかじめ確認が必要です。
出典:厚生労働省
家計を守るための具体的な対策
高額療養費制度の改正を見据え、家計を守るためには以下の具体的な対策が有効です。
- 医療保険やがん保険などの見直し
医療保険やがん保険など、現在加入中の保険を見直し、必要に応じて補償内容を充実させましょう。特に、自己負担限度額が増える中間層は、保険の補償範囲が適切か確認することが重要です。健康保険組合によっては「付加給付」が用意されており、上乗せ給付が受けられる場合もあります。 - 家計のシミュレーション
将来的な医療費増加などに備えるための貯蓄計画を立てましょう。とくに、高額な治療を想定した場合の自己負担額をあらかじめ把握することが大切です。 - 医療費控除の活用
高額療養費制度と併せて、医療費控除を活用することで、税負担を軽減できます。医療費控除は、家族全員の医療費を合算して申請できるため、レシートや領収書をこまめに保管し、確実に手続きを行いましょう。 - ファイナンシャルプランナー(FP)への相談
医療費控除や保険見直しについては、専門家のアドバイスを受けることで、より効果的な対策を講じることができます。必要に応じて、ライフプラン全体を見据えた資産運用や家計管理を検討するのも良いでしょう。
まとめ
2025年8月から2027年8月にかけての高額療養費制度の改正など医療負担の増加は、今後家計やライフプランに大きな影響を与える可能性があります。現在の制度改正は医療費負担の公平性や持続可能性を確保するための重要な取り組みですが、中間層や高所得層の負担増加も懸念されています。
政府には、丁寧な説明と国民に配慮したバランスの取れた制度設計が求められると同時に、国民一人ひとりが各種制度に関する知識や医療負担増大に関しての対策を講じることが重要です。
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